3Dプリンタ出力品キットでのWF参加のススメ①(出力品キットは原価が安い?)

此葉です。

2019年から3Dプリンタ出力品キットでワンフェスに参加をして5年目になりました。

2018年の初め頃にAmazonで購入することができる光造形方式の3DプリンタであるANYCUBIC社の初代Photonが発売してから、モデラー界隈に3Dプリンタが一気に広がっていきました。

私は2018年に大型の光造形機であるProzen社のShuffleXLを2018年の末頃に購入して3Dプリンタに手を出しました。

それから早5年、所持している3Dプリンタも5台にまで増加し、ある程度3Dプリンタ出力品のキットの作成のノウハウも身について来たように感じますので、これから3Dプリンタ出力品でワンフェス等のイベントに参加しようと考えている方に向けて、どのような注意点などを記事にできたらと考え、筆を取りました。


第一弾は3Dプリンタ出力品のキットを作るディーラーが一番気になるであろう原価について書いて行こうと思います。


3Dプリンタ出力品キットは原価が安い?

 3Dプリンタのレジンは私がよく使用しているSirayaのMechaレジンでおよそ8000円程度、安いFastレジンで4000円程度、今回販売したラウラのガレージキットはだいたい1キットで600g弱、サポートをつけて大体1キット750g、今回はテストショットも含めて大体ラウラだけで6L程度使用して作成しました。

なので消耗品のFEPフィルムを含めても高くで5万円、安くて3万円程度の費用がかかる計算になります。


これに対して、このキットをシリコン型で作成しようと思ったら台座で2型、フィギュア本体で2型~3型、型サイズを簡単に計算するならば

1.台座① 250×250×30

2.台座② 250×250×30

3.本体① 250×250×70

3.本体② 250×250×50


おそらくこれだけあれば問題なく作成できるとは思います。

1875g+1875g+4375g+3125g = 11250g

今回は1キットで600g程度なので10000gから600gを引いて、大体1キット分のシリコン使用量は10.5kg程度になるかと思います。

1kg3300円の旭化成 ワッカーシリコン M8012を使用して型を作成したとするとその他の消耗品類も含めて、およそ1キット分で35000円程度で作成できる計算になります。


コレに加えて2液混合型のレジンを今回のラウラと同数の7キット分だけ作成したとすると600g×7+1で4.8kg、ウェーブ・レジンキャストEx.2kgが4950円なので25000円程度になります。


まとめると以下の様になります。

1.3Dプリンタ複製キット
 Siraya Mechaレジン(高級レジン) 50000円程度
 Siraya Fastレジン(安価レジン)   30000円程度


2.シリコン型複製キット
 型35000円、レジン25000円    60000円程度


シリコン型の計算がガバガバすぎるので実際はもう少しかかるかもしれませんが、おそらくはコレより安くなるということは無いと思います。


こうして考えると安価な3Dプリンタレジンを使用すればかなり費用が抑えられる様に感じますが、実際のところ4000円クラスのレジンで販売するキットを作成することはおすすめしません。もし安価な3Dプリンタレジン使用するならば白色でのキット作成は諦めたほうが良いです。

SirayaのFastホワイトも含め、ほとんどの白色の3Dプリンタレジンで4000円程度のものは顔料の量が少なく、白というよりは白濁色といったほうが近い色になります。

白濁色でも問題ないと思うかも知れませんが、白濁色で問題が発生するのは色の問題だけではありません。白濁色では3Dプリンタの光が完全に遮光されずに、ややサポート面付近が太って荒れてしまいます。そのため、キットの嵌合が悪くなてしまいキットのクオリティの低下に繋がってしまいます。

なので安価のレジンを使用するならば透けの少ないグレー、高級レジンを使用するならば白色を使用することをおすすめします。


こうして実際に計算してみると正直大きな違いはないように感じます。

しかし、コレは原材料の金額のみであり一番重要な作業時間の計算が含まれていません。


おそらくシリコン型の作成でかかる時間は

1.粘土埋め 5h

2.シリコン型作成 2h

3.複製 3h

4.諸々後処理等 2h

雑計算でおよそ12時間あれば7キット分の複製はできるのではないかと思います。


これに対して3Dプリンタ出力キットの制作にかかる時間は1キット5出力とすると

1.サポート付 2h

2.出力前処理 10分 × 5出力 × 7キット = 6h弱

3.出力後処理 30分 × 5出力 × 7キット = 17.5h

雑計算でおよそ25時間程度あれば7キット生産できるとは思います。


この10時間と25時間には連続で作業ができる時間という意味で大きく違いがあります。


シリコン型複製の12時間は、ほとんどまとめて作業を行うことができ、シリコン流し、の後に8時間程度の硬化時間は必要ですが基本的にはそれ以外は一気に作業を行うことができます。


これに対して、3Dプリンタ出力複製の25時間は1日でまとめて行うことができる時間に制限があります。これは作業時間に書かれてはいませんが出力の前処理と後処理の間には出力時間がおよそ8~15時間程度入ることが原因しています。

そのため、1日で作業できる時間が3Dプリンタ1台につき80分~120分程度に制限されます。3Dプリンタを1台所持しており、1日80分の作業ができるとすると25時間分の作業を完了させるためにはおよそ18日程度かかる計算になります。

この作業完了にかかる時間が18日かかるというのがなかなか大変で、私はイベント期間中はだいたい3Dプリンタ中心の生活を送っています。

朝起きてから出力物の後処理、次の出力の前処理、出力開始

会社帰宅後、出力物の後処理、次の出力の前処理、出力開始

朝起きてから出力物の後処理、次の出力の前処理、出力開始
(以後繰り返し)

といった生活サイクルで1ヶ月近く過ごしますので、これから3Dプリンタ出力品でのキット作成を行う予定の方は覚悟を持ってください。


以上のことから、私としてはあまり3Dプリンタ出力品でガレージキットを作るのはおすすめしません。


それでも私が3Dプリンタ出力品で販売をしているのは造形の自由性にあります。

基本的に2面のシリコン型で複製できる形状にはある程度の制限があります。逆テーパーの強い形状や筒状の形状は複製が難しく、また、型制作やレジン注入の作業者の熟練度にクオリティが大きく左右されるという点があります。

これに対して3Dプリンタ出力の形状に大きな制限はなく、かなり自由な形状を出力することができます。また、3Dプリンタでの出力は温度等の出力条件さえ整えれば出力の品質を制御が容易であるという点で優れています。


正直、私もそろそろ出力品キットの作成に限界を感じて来ているので、ある程度はシリコン型複製に置き換えようかなと考えています。


3Dプリンタ出力品キットでのWF参加のススメ① 3Dプリンタ出力品キットの原価についてでした。

此葉



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